上海滞在中に読んだ莫 邦富(mo@china)さんのレポートを紹介します。
まずはレポートの抜粋
-----------------------
オフィスビルを出て空港に向かうマイクロソフト中国の幹部の前に、一台のタクシーがまっすぐ走ってきて止まった。運転手は、オフィスビルを2周して遠くへ行きそうなあなたの乗車を狙っていたのだ、と打ち明けた。「すごい眼力だね」と幹部は驚いた。
まず運転手は彼のコスト意識を披露した。毎日会社には、1日当たり定額の380人民元と燃料費に相当する約210人民元を納める。それ以上稼げば運転手の手取りとなる仕組みだ。17時間働くので1時間当たりのコストは34.5人民元だ。次の客を乗せるまでの平均空車走行時間は7分間。もしワンメーターの客を乗せれば、実車走行時間が10分
で、料金が10人民元。合計17分間で10人民元の収入しかないという計算になる。しかし、17分間のコストは 9.8人民元だから「そうなると食っていけない。だから、いかに長距離のお客さんをつかむかが腕だ」という。
ここまでコスト意識をもつ運転手は珍しいと思った幹部は、ではどのようにいいお客さんを見分けるのか、とさらに掘り下げてみた。
まず客を見つけるために、やたらと走り回るのはよくない。客待ちの場所と時刻をわきまえて、客を選択する。たとえば、病院の前で薬をもった客と洗面器をもった客がいるとすれば、タクシーをどの客の前に止めるべきかを判断する。運転手は洗面器をもった客の前に止まると断言した。薬をもった客はたいてい普通の病気を治療するために病院に来た者だ。しかし、洗面器の方は退院した人だろう。病気を治して退院したときは、生まれ変わった解放感があり、命の大事さと健康が第一だということを思い知らされている。だから、郊外の自宅に帰るときでもタクシーを使おうとするのだ。近くの地下鉄の駅まで乗って行って、そこで地下鉄に乗り換えようとは考えない、という。
ここまで話を聞いた幹部は運転手の話にすっかり興味を示してしまった。運転手は話を続ける。
科学的な方法、統計学的な方法で商売をすべきだ。毎日、いくら地下鉄の駅の前で待っていてもたいして稼げない。知識で自らを武装すべきだ。ある日、上海駅に行くお客さんがいた。お客さんが指示した道ではなく運転手は高架道路を勧めた。遠回りになるからとお客さんは嫌がったが、運転手は説得した。いつものルートの料金50人民元でいい。超過分はいただかない。実際は運転手が勧めたルートの方が4km余計に走ったが、25分も時間短縮になった。実際の料金よりも10人民元ほど節約できてお客さんは喜んだ。実は運転手もうれしかったという。10人民元の売り上げ減少とガソリン代4km分に相当する1人民元のコストアップを伴ったが、それと引き換えに25分間の時間コスト、つまり14.5人民元を節約できたのだ。
上海大衆タクシーにいる2万人の運転手の手取りは、ほとんどが毎月3000人民元-4000人民元で、よくて5000人民元くらいだ。8000人民元以上は2-3人程度しかおらず、その運転手はそのうちの一人だという。
ここまでくると、幹部はもうこのスーパータクシー運転手の話しのとりこになっていた。
「だから私は常に楽しい。稼ぎが多いから喜んでいるのだろうと言われるが、それは違う。常に楽しい気持ちで仕事をするから稼げるのだ、と私は言いたい。仕事がもたらしてくれる喜びを知ることが大事だ。人民広場で交通渋滞に巻き込まれると、たいていの運転手はいらいらする。だが私はこの時間を利用してこの都市の美しさを体験する。ほら、きれいな女の子が車の前を通っていくだろう。そびえ立つ近代的な高層ビルの住宅は買えないけど、見ていて気持ちがいい。空港に行くときは両側の緑が美しい。メーターに目をやるとすでに100人民元を上回っている。気分は最高だ。どの仕事にもよいところがある。仕事を通してそのよいところを見いだし、楽しむのだ。」
空港に着いた幹部は、名刺を差し出した。「今週の金曜日、マイクロソフト社で、社員たちにあなたがどのようにタクシーの商売をしているのか講演していただけないでしょうか。」
今年42歳で、17年間タクシーを運転してきた上海大衆タクシーの臧勤さんは3月17日午後3時、マイクロソフト中国を訪れて1時間近く講演した。講演中8回もの熱烈な拍手を受けた。
-----------------------------------
素晴らしい!
ここには、日々生きる場を科学し、生きる力を拡張し続けている真のプロの姿があります。スーパータクシー運転手は、タクシー会社の教訓だけに留まらず、どんな仕事にも共通していると断言できますね。

(注)だがこれは個としてのプロの戦略のはなし。企業イメージを上げ、全体としての利益を拡大する日本のタクシー会社が取るべき戦略とは別物である。つまり、タクシー会社が取るべき第一の戦略はやはり“顧客満足”である。その上で乗車率を最大にし、全体の利益を上げるお客様データベースマーケティングはかかせない。
http://www.dotty-jcl.com Copyright(c)CONCEPT LABO JAPAN inc.